第161章 沢井恭子が動く

佐藤家。

「婚約者！」

佐藤さんは目を輝かせながら佐藤大輝を見つめていた。五十嵐正弘が退院して浦和に戻ることになったため、昨日は佐藤さんが夫婦二人に付き添っていて、夜も五十嵐奥さんと一緒に過ごし、家には帰らなかった。

今日帰ってきて、昨日の佐藤大輝が株主たちに言った言葉を聞いて、彼女は興奮を隠せなかった。朝食を取っている佐藤大輝を見つめながら、目を輝かせて尋ねた。「本当なの？」

「ああ」

佐藤大輝はさらりと答えた。

佐藤さんはすぐに指を立てて計算し始めた。「じゃあ、私たちの家で婚約パーティーを開かないと？でも最近は会社の用事が多いから、パーティーは後回しにした方がいいわね。そうしないと縁起が悪いもの。でも、このニュースは先に広めないと！少なくとも会社のあの老いぼれたちに知らせて、今後は私の義理の娘をいじめないようにしないと！」

そう言って、沢井恭子の方を向いた。「恭子ちゃん、しばらくの間我慢してもらって申し訳ないわ」

沢井恭子は佐藤大輝をちらりと見た。

昨日彼女は同意していないと言ったのに、この人は外の人たちにもう知らせてしまった。

佐藤大輝は表情を変えずに、目の端で彼女を見ていた。

なぜか少し緊張していた。

昨日彼女に断られたが、今はどうなるか分からない…

すると沢井恭子が微笑みながら言った。「大丈夫よ」

佐藤大輝は何故か安堵のため息をついた。

そのとき、佐藤さんから殺人の疑いが晴れるまで外出禁止を命じられていた佐藤澄夫が突然口を開いた。「お兄さん、セロリ嫌いじゃなかった？」

この言葉に、みんなが佐藤大輝を見つめた。彼が先ほど考え事をしている間に、何気なくセロリを取っていたことに気付いた…

佐藤大輝：「……」

テーブルの三人の子供たちと他の人々が彼を見つめているのを見て、佐藤大輝は無表情のまま、セロリを佐藤澄夫の茶碗に移した。「ああ、お前に取ってあげたんだ」

佐藤澄夫：？

彼は呆然として言った。「僕も嫌いなのに！」

佐藤大輝が冷ややかな目で彼を見つめると、佐藤澄夫はすぐに頭を下げた。「あ、忘れてた。実は好きなんだった」

「えっ？おじさんセロリ好きなの？じゃあもっと食べて！」

佐藤和利はすぐにまたセロリを取って渡した。

隣の佐藤百合子は呆然と彼を見つめた。「お兄ちゃん、なんでそんなに親切なの？」