第175話 また顔を潰す!!

「お母さん……」

佐藤大輝の手が一瞬止まった。

彼は顔を上げ、驚いて佐藤百合子を見つめ、喉が詰まりながら「今、何て……?」

「お母さんよ、これはお母さん!」佐藤百合子は絵を指さしたが、佐藤大輝の目が赤くなっているのを見て、戸惑いながら「お母さんじゃないの?」と聞き返した。

「……違う」

佐藤大輝は鳳眼を伏せ、慎重に絵巻を巻き、しまった。

そして、大きな手を伸ばし、佐藤百合子の頭を撫でた。

佐藤百合子は小さな眉をひそめ、柔らかい長い髪が佐藤大輝に撫でられて少し不快だった。逃げようと思ったが、佐藤大輝の様子を見て、咳払いをしながら「お母さんじゃないなら、誰なの?」

「とても大切な……友達だよ」

佐藤大輝は長い間考えてから、やっと子供の前で彼女のことを表現する適切な言葉を見つけた。

「そう」

佐藤百合子はパパがどうしてママを知らないのか分からなかったが、その絵を見つめ続け、小さな頭の中である考えが浮かんだ。

次にパパを怒らせたら、ママのお面を盗んで被れば、パパは見たら怒らなくなるんじゃない!

佐藤百合子は自分の考えが正しいと思った!

沢井家の別荘に行くことを決めた~~

佐藤百合子は探していた本を手に取り、恐竜のぬいぐるみを抱きしめながら、パパの心を掴む秘密を見つけたかのように満足げに、確固たる足取りで書斎を出て行った。

佐藤大輝は娘が何を考えているのか知らず、ただ「今日の字の練習は?」と尋ねた。

「ぱたっ」佐藤百合子の確固たる足取りが一瞬よろめき、小さな頭がゆっくりと垂れ下がり、全身の元気が抜けた。

佐藤大輝:「……」

佐藤百合子が処刑場に向かうかのように図書館へ向かう様子を見て、佐藤大輝は思わず笑みがこぼれた。娘は本当に可愛すぎる!

そう考えていると、突然下階から言い争う声が聞こえてきた。

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沢井恭子も予想していなかったが、佐藤家に着いたばかりで、佐藤深志と二見恵子がまた訪ねてきたところに出くわした。

三人は玄関で出会い、一瞬驚いた。

二見恵子は目を真っ赤にし、佐藤深志は怒気を含んでいた。沢井恭子を見ると、彼は口を開いた:「まだ兄さんと結婚もしていないのに、もう兄さんの味方をして私に対抗するのか?」

沢井恭子:?