二見恵子はWeChatのメッセージを送った後、すぐに削除していた。
今、村上隊長が彼らに見せているのは、あの記者とのチャット履歴だった。
二見恵子は怒りで気が狂いそうだった。
あの記者はなんてバカなの?しかも、どうして彼女のことを暴露してしまったの?
おかしい、疑われてから今まで、数分しか経っていないのに、どうしてチャット履歴を入手できたの?
彼女は驚愕と恐怖で村上隊長を見つめ、突然気づいた。これは彼らが技術的な手段を使ったのだ。でも、彼らの技術はもうそんなに高度なの?
二見恵子が知らなかったのは、村上隊長のこのWeChat履歴は、沢井恭子から提供されたものだということだ。
証拠が揃い、二見恵子はもう弁解できなくなった。上司は怒りで即座に解雇を言い渡した。「君は解雇だ。そして、事件の機密漏洩について責任を追及する。家に帰って、組織からの処分を待ちなさい!」
これらの事について、沢井恭子は関与していなかった。
二見恵子は彼女にとって、道端の石ころのような存在で、蹴飛ばして無視すればよかっただけだ。道中、彼女は木村弁護士と別れ、サンプルを持って直接木下緑子のクリニックへ向かった。
受付に着くと、木下緑子が熱心に出迎えた。「あら、親愛なる~こんなに早く会いに来てくれたの?」
「……設備室を貸して。何か調べたいものがあるの」沢井恭子は淡々と言った。
木下緑子は即座に口を尖らせた。「冷たい人ね」
そう言いながらも、彼女を会社の中へ案内した。
木下緑子の小さなクリニックは外見は小さいが、内部は決して簡単なものではなかった。
彼女は医学界では目立たない存在だが、地下組織では有名で、怪我をして病院に行けない人々が彼女を頼りにしていた。
沢井恭子と木下緑子はエレベーターに乗り、木下緑子が3階の機器室のボタンを押そうとした時、沢井恭子が言った。「地下2階」
木下緑子の表情が一変し、冗談は消え、地下2階のボタンを押しながら、真剣な面持ちで言った。「今回調べるものは、そんなに重大なの?」
「ええ」
沢井恭子は無駄話をしなかった。
二人はすぐに地下2階に到着し、そこには医学実験施設があった。広々とした空間は数百平方メートルあり、様々な機器が設置されていた。