第187章 騒動

ザルスは眉をひそめた。「行かない!」

彼に会いたがる人は数え切れないほどいた。医薬業界のトップ研究者として、ザルスは誰にでも会うわけではなかった。

大和に来てからずっと、彼はこの研究施設で新薬の研究開発を続けており、佐藤大輝にさえ会っていなかった。

彼はずっと景山神医が訪ねてくるのを待っていたのだ!

藤原夏美は少し落胆したが、目を向けると、同じ実験室にいる先輩たちの中に、木村和俊という日本人がいることに気づいた。彼女と同じくザルス教授の下で博士課程を学んでいた。

木村和俊は正義感が強く、性格的な欠点が明らかで、物言いが直接的で人を怒らせやすく、道徳で他人を縛ろうとする傾向があった。

今、彼は怒りながらスマートフォンを操作していた。明らかにメッセージを送っているようだった。

藤原夏美は口元を歪めた。ザルスの沢井恭子に対する評価はすぐに広まるだろうと知っていた……

スマートフォンを取り出し、研究グループのチャットを開くと、案の定、施設内ですでにこの件について議論が始まっていた。

木村和俊:【先生は佐藤グループの今回のやり方を気に入らないと言っています。先生と私たちがここにいるのに、こんな低レベルな手段で医薬品市場に進出する必要はありません。私たちの新薬が開発されれば、必ず国内の医薬界に衝撃を与えるはずです。なぜこんなことをする必要があるのでしょうか?】

木村和俊:【国内外の研究環境はあまりにも違います。私たちは医薬品におけるビジネス手段を断固として拒否します!】

木村和俊:【私たちこれだけの人数がいるのに、なぜエネルギーを全て解熱丸に注ぐ必要があるのでしょうか?人類に無用な薬を作り出すよりも、難病の研究に時間を使うべきではないでしょうか?】

下には賛同の声が並んでいた。

受付担当の川相も、グループ内で義憤に駆られて発言しているのを見て、藤原夏美は川相に個人的にメッセージを送った:【川相さん、私はまだしばらく実験室にいるので、先にお客様の対応をお願いできますか。】

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応接室にいる山村治郎と沢井恭子は、これらのことを知る由もなく、沢井恭子は窓際に立って、遠くの研究センターを見つめていた。