沢井恭子はちょうど佐藤グループの製薬工場に到着したところだった。
佐藤大輝は帰国した時、すでに事業転換を考えていた。そのため、この製薬工場はすでに建設されており、海浜市の郊外に位置していたものの、規模は巨大で、製薬工場の他に新薬研究開発基地もあり、完全に一つの工業団地と呼べるものだった。
佐藤グループがZグループから購入したバイオ培養皿は、研究開発基地の中にあった。
この近くには社宅も建てられており、雇用された医薬の専門家たちは、新薬の研究開発をする際に、直接ここに住むことができた。
沢井恭子は山村治郎の傍らについて歩きながら、工業団地内の施設を見渡し、心の中で佐藤大輝の大胆な投資に感嘆した。
佐藤家は以前不動産業を営んでいたので、このような工業団地を建設するのは当然容易なことだった。
しかし、医薬品事業で最も価値があるのはこれらの建物ではなく、新薬を研究開発するための様々な機器だった。
これらの機器の中には、国内ではまだ生産できないものもあり、すべて高額で海外から購入したものだった。
工業団地の建設だけでも、おそらく佐藤グループの対外資産を使い果たしていただろう。しかも現時点では何の見返りもなく、株主たちが佐藤大輝を非難するのも無理はなかった。
他の企業が事業転換する時は、徐々に進めていくものだった。
彼だけが大胆に、佐藤グループの既に成熟した産業チェーンを完全に放棄し、製薬分野でゼロから始めたのだった。
この度胸だけでも、沢井恭子は密かに感心せざるを得なかった。
しかし、彼の毅然とした表情と、身にまとう鋭い雰囲気を考えると、このような行動様式は彼にぴったりだと思えた。
工業団地を一周した後、山村治郎は沢井恭子を製薬工場の応接室に案内し、藤原夏美に電話をかけた。
藤原夏美はちょうどその時、指導教授のザルスと一緒に新薬の研究開発をしていた。
電話を受けた後、藤原夏美は眉をひそめた:「分かりました、今すぐ行きます。」
白髪まじりのザルスは今年すでに60歳を超えており、故郷を離れて大和に来たのは、景山神医との約束があったからだった。
彼は白い実験着を着て、真剣に顕微鏡で実験データを観察していた:「夏美君、我々の実験は一歩前進したが、もっと試薬が必要だ。買い出しに行ってくれないか。」