第192章 咳き込み

配信ルームには人がどんどん押し寄せ、視聴者数は一千万人に迫ろうとしていた。

傍らのスタッフが駆け寄り、解熱丸を一錠取り出して彼女に渡した。「山崎さん、今、遺体は高度に腐敗しており、感染症ウイルスの培養床となっています。あなたは先ほど遺体に触れたので、必ず感染しているはずです。すぐにこの解熱丸を飲んで予防する必要があります。」

山崎夏枝はスタッフから解熱丸を受け取ると、唇を歪めて笑い、それを地面に投げつけて踏みつぶしてから言った。

「解熱丸だって?これは全て佐藤グループの陰謀と計画よ!私の兄が殺されたのに、感染症だなんて言い訳して、ちょうど佐藤グループが治療薬を出してくる。この偶然は本当に許せないわ!」

彼女はカメラを直視して言った。「私は佐藤グループのどんな薬も飲まないわ。これから数日間で、皆さんに佐藤グループの本当の姿を見せてあげる!」

彼女のスマートフォンを奪おうとする人もいたが、山崎夏枝はカメラを向け変えて相手の奪取を避け、叫んだ。

「私には発言の自由があるわ!私を制御しようとしないで!

みなさん、私を見守っていてください。もし私の配信ルームが閉鎖されたら、それは必ず佐藤グループが上層部と結託して仕組んだことよ!それは彼らに非があることの証明になるわ!

もし私のスマートフォンが奪われたら、それも彼らに非があることの証明になるわ!」

山崎夏枝のこの言葉で、強制的にスマートフォンを奪おうとしていた人々は前に出られなくなった。

山崎武弘は火葬され、山崎の母も現場にいた。本来はスタッフに外で待機するよう言われ、感染を恐れて遺体に近づくことを禁止されていたが、この時も駆け寄って泣きながら叫んだ。「どうか私たちに公正な判断をください!私たちの武弘をこんなにあいまいなまま死なせることはできません!」

弱者は常に人々の同情を引く。

山崎夏枝は口パクアイドルだったが、この時、実の兄を亡くし、可哀想に泣いている姿に、大衆は再び彼女に魅了された。

たちまちネット上は騒然となり、再び佐藤グループに対する悪評が広がった。

人々の解熱丸を購入する熱意は次第に冷めていった。

佐藤グループの外の行列も徐々に少なくなっていった。