佐藤大輝は仕方なく立ち上がった。「私について来なさい」
藤原夏美が連行される時、パーティー会場は一時騒然となった。
しかし山村治郎はすぐに皆を落ち着かせ、藤原夏美が解雇されたことを伝え、毒物混入の件は伏せた。
その時、佐藤大輝は木村和俊を連れて左側のドアから出て行き、村上隊長たちが藤原夏美を捕まえ、駐車場の黒い車の前まで直接連れて行くのを目撃した。
木村和俊はそれを見て、さらに怒り、駆け寄った。「何をしているんだ?追い出せばいいだけなのに、後輩をどこに連れて行くつもりだ?」
村上隊長は眉をひそめ、ポケットから証明書を取り出して彼に渡した。「これが私の証明書です。藤原夏美は毒物混入による公衆衛生危害の容疑で、我々は法に基づいて逮捕します」
木村和俊は呆然とした。「こ、こんなことがあり得るはずない!」
村上隊長は簡潔に証拠を提示した。「これは彼女から発見された生きたウイルスのサンプルです。このチーズケーキは彼女が先ほど毒を入れた物です。現行犯で証拠も押収しました。何か異議はありますか?」
木村和俊はまだ信じられない様子で、藤原夏美を見つめた。
藤原夏美もまだ呆然としていたが、木村和俊の後ろにいる佐藤大輝を見た時、突然我に返った。「佐、藤、大、輝、あなたが私を陥れたのね!」
佐藤大輝は彼女と話す気も起こらなかった。
村上隊長は眉をひそめた。「我々は緊急で製薬工場の監視カメラを確認しました。あなたは今朝出勤時にウイルスサンプルを持ち出していました。そして、あなたを通報したのは佐藤さんです。どうして彼が関係しているというのですか?」
藤原夏美は叫んだ。「彼よ!彼が私に全員に毒を入れるように言ったの。そうすれば大量の解熱丸が売れるから。彼はお金のためにやったのよ!」
村上隊長は彼女を見つめた。「では、証拠はありますか?」
藤原夏美は即座に黙り込んだ。
現行犯で逮捕されたのは彼女だった。潔白を証明するには、これが佐藤大輝の指示だったという証拠を示さなければならない。でも、そんな証拠があるはずがない!
佐藤大輝は一歩前に出た。「私にはあります」
彼は携帯を取り出し、録音機能を開いて、藤原夏美、彼自身、山村治郎の三人の会話を再生した。その中で藤原夏美が提案し、山村治郎が反対し、佐藤大輝が「出て行け」と言った様子が明確に記録されていた。