佐藤大輝は前方を見つめていた。
頭の中で、突然またあの信じられない考えが浮かんだ。
沢井恭子は……五一八号室なのではないか?
この頃、彼は彼女の中に五一八号室の影を見ることが多かった。
彼女と五一八号室は明らかに違う人物だ。
五一八号室は酒を命とし、沢井恭子は一滴も飲まない……
五一八号室は意欲に満ち溢れ、沢井恭子は引退したがっている……
五一八号室は情熱的な性格で、沢井恭子は水のように穏やか……
明らかに異なる二人なのに、五一八号室だけが5号神経毒素の製造者で、彼女のその後の行動にも合理的な説明がついた。
佐藤大輝の呼吸が突然荒くなった。
彼には信じられなかった。
五一八号室は確かに死んだ、彼はそれを確信していた。爆発で彼女の遺体の残骸が見つかったからだ。だから何度も疑いを持ちながらも、本当にそちらの方向には考えが及ばなかった。