第235章 私は分かっています

「無料?」

この世で一番怖いのは無料のものだ。

この人が真実を知っているなら、全ては彼が仕組んだことかもしれない。どうして親切に教えてくれるはずがあろうか?

沢井恭子と佐藤大輝は目を合わせた。

佐藤大輝が口を開いた:「どうぞ、お話しください」

相手は笑みを浮かべた:「私が全ての真実を話しても、あなたたちは信じないでしょう。こうしましょう。いくつかのヒントを差し上げます。私の言う手がかりに従って調べてください」

これは相手の思う通りに動かされることになる。

沢井恭子は当初から面倒くさがって、この電話を無視していた。案の定、電話の内容は不快なものだった。

しかし、彼女は過去のことについて何も分からない。

佐藤大輝の記憶については、彼女とはズレがあるものの、根本的には問題ないはずだ。

二人とも五里霧中で、この選択肢しかないようだった。

佐藤大輝は少し黙った後、「話してください」と言った。

「最初の手がかりは、沢井恭子さん、あなたは考えたことがありますか?あの夜の後、佐藤大輝はなぜ姿を消したのか?ホテルの監視カメラの映像は消されていても追跡できますが、他のものはどうでしょう?」

他のもの……

沢井恭子は深く考え込んだ。

当時、佐藤大輝が消えた後、彼女は警察に通報した。ホテルの監視カメラには二人の痕跡がなかった。これは既に解明されており、林円佳の仕業だった。

彼女は沢井恭子のアイデンティティを盗むために、この痕跡を消したのだ。

でも、彼の職場や自宅住所は?

当時、彼女は半年間恋愛関係にあった。F国で知り合い、帰国後に再会して何度か会っていた……

彼はジャーナリストだと言い、全国を飛び回る仕事だと説明していた。しかし、警察が調査したところ、その新聞社にはそんな記者は存在しなかった!

彼のジャーナリストとしての身分は偽物だった。

彼は自宅の住所も教えてくれて、三人家族で海浜市の地元の人間だと言っていた。二人は結婚の話まで進んでいて、沢井恭子はプロポーズの後にお互いの実家に挨拶に行くことを考えていた……

しかし警察が彼の言った住所に行ってみると、確かに三人家族が住んでいたが、息子は普通に仕事をしており、佐藤大輝ではなかった。

つまり、自宅住所も偽りだった。