沢井恭子の声に、温井琴美は一瞬固まった。
五十嵐孝雄も急に彼女の方を見た。
温井琴美は目を細めて言った。「できるの?もしかして五十嵐、琴曲の修復が終わったの?」
五十嵐孝雄は唇を噛んで答えた。「まだだ」
温井琴美は言った。「明後日が大会よ。先生は今日の午後5時までに楽譜を提出するように言ってたわ。もし修復できていなかったら、演目は取り消しになるかもしれないわね……」
五十嵐孝雄の表情が暗くなった。
沢井恭子は桃色の瞳に笑みを浮かべながら言った。「まだ時間があるじゃない?」
温井琴美は腕時計を見た。「提出期限まであと1時間しかないわよ……」
「何を焦ってるの?」沢井恭子は余裕そうに彼女を見て言った。「1時間も待てないの?生まれ変わりでも急いでるの?」
「……」温井琴美は言葉に詰まった。