「沢井さん、こちらです」
白井隆司の声に、沢井恭子は我に返った。
彼女は白井隆司と五十嵐紀代実の後ろについて歩いた。
この恋人同士は今、まさに蜜月の時期で、二人が会うなり、普段は落ち着いている白井隆司が小指で五十嵐紀代実の手に触れた。
五十嵐紀代実は顔を赤らめ、すぐに手を引っ込め、彼を睨みつけた。
そして、ここは白井家だし、従姉妹もいるのよと目配せした。
白井隆司は沢井恭子を一瞥したが、彼女の視線は遠くを見つめていたので、また五十嵐紀代実の手首を掴んだ。「何を恐れることがあるの?従姉は見ていないよ」
二人の仕草を全て見ていた沢井恭子は「……」
でも、沢井千惠と景山誠のイチャイチャに比べれば、この二人のは前菜にも満たないレベルで、彼女は完全に免疫があった。
白井家も広大な敷地を持つ屋敷で、嫡系一族が全員ここに住んでいた。