第300章 顔面崩壊!!

そのとき、沢井彩芽の声が聞こえてきた。「お爺さま、怒らないでください。すべて私の不徳の致すところです。私の祖父のところにも狂人の書が二幅あって、宝物のように大切にされていて、見せてもらえないので、余計に見たくなってしまったんです。孝志はそれを知って、失礼な行動をしてしまいました」

沢井彩芽が口を開くと、彼女を心から可愛がり、普段は何にも興味を示さない白井奥さまがすぐに言った。「みんなが見たがっているのだから、見せてあげたらどうですか?たかが一幅の書ですよ。見せたからといって、なくなってしまうわけではありません」

白井奥さまはそう言うと、年老いた目を五十嵐紀代実に向けた。「それとも、紀代実さんは見せたくないのかしら?」

五十嵐紀代実:!!

こうして、難しい問題が自分に投げかけられた。

五十嵐紀代実は白井家の状況がよく分かってきた。

白井家の嫡長男の地位は安定しており、家の兄弟たちは彼と争う勇気がない。白井隆司は控えめだが、白井お爺さまに可愛がられているため、目の上のたんこぶとして見られている。

白井お爺さまが白井隆司を庇うので、長男の白井孝志はますます嫉妬心を募らせている。

白井お爺さまは白井孝志に非常に厳しいが、その妻の沢井彩芽は、白井家の次男の関係で、お婆さまの寵愛を受けている。

白井孝志が叱られても、お婆さまは何も言わなかった。

沢井彩芽が自分が見たかったと言い出すと、白井奥さまはすぐに庇いに出てきた。

五十嵐紀代実は唇を噛みながら、再び白井隆司を見た。

白井隆司も明らかに表情が曇った。彼は言った。「お婆さま、お姉さまに見せたくないわけではありません。ただ、この書はまだ表装されておらず、保護もされていません。みんなが見て、つい手で触ってしまうと、書が傷んでしまう可能性があります」

白井奥さまは言った。「みんな礼儀をわきまえた人たちですよ。どうして故意に書を傷つけるでしょうか?言い訳はやめて、早く開けなさい。私も見せてもらいたいわ」

白井隆司はもう反論できなかった。

そのとき、お爺さまが突然言った。「それは駄目だ。もし誰かが我慢できなかったらどうする?表装していない書は見せられない!早く私によこしなさい!表装が済んでから、みんなに見せてあげよう!」

お爺さまが無理を通そうとすると、奥さまも諦めるしかなかった。