第301章 本物はここにある!

沢井恭子の手には二枚の書があり、箱すらありませんでした。

そのため、彼女はそう言うと、手に持っていた二枚の巻かれた書を五十嵐紀代実に渡しました。

五十嵐紀代実は呆然と頭を下げ、手の中の二枚の紙を見つめ、まだ少し頭が混乱していました。

部屋の中は静寂に包まれていました。

その時、兄の白井孝志が突然五郎を睨みつけ、五郎はすぐに反応し、叫びました。「書を贈る?また何か目くらましをしているのか?先ほど贈った書は紙切れだったが、今度は何なんだ?」

そう言うと、一歩前に出て五十嵐紀代実の手から書を奪おうとしました。「本物なら見せてみろ!適当な白紙を持ってきて騙そうとするな!白井家を侮辱していいと思っているのか?」

五十嵐紀代実は反射的に後ずさりし、白井隆司が五郎を止めようとした時、白井孝志が突然近づいてきて、白井隆司を引き止めて言いました。「隆司、この縁談はよく考えた方がいい。白井家は騙されるわけにはいかない……」

白井隆司は兄から逃れて五十嵐紀代実を助けようとしました。

しかし、白井孝志の力が強すぎて、すぐには振り切れませんでした。

仕方なく、彼は突然力を込めて白井孝志を押しのけ、やっと五十嵐紀代実の前に来ましたが、一歩遅かったのです。

白井五郎はすでに五十嵐紀代実の前に来ており、彼女の手にある書を掴もうとしていました。

沢井恭子の瞳が沈みました。

彼女が一歩前に出ようとした時、腕を佐藤大輝に突然掴まれました。「手を汚す必要はない」

言い終わると、彼は一歩前に出て、白井五郎の手首を蹴りました。

「バキッ」という音とともに、白井五郎の手首が折れました。

白井家は四大財閥の一つで、京都の権力と地位を握っているため、佐藤大輝のこの一蹴りは急所を避け、手加減したものでした。

白井五郎は即座に叫び声を上げました。「あっ!」

白井さんは椅子から飛び上がり、急いで自分の息子を支え、怒りに震えながら佐藤大輝を指差して言いました。「ここは白井家よ。よくも手を出したわね?息子に手を出した結果がどうなるか分かってるの!」

佐藤大輝は足を引き、今や沢井恭子の前に立ち、白井さんの憎しみの全てを受け止めながら、鋭い目で言いました。「彼が先にいとこに手を出したんです」