沢井恭子は白井桜子の母親に会ったことがある。
白井桜子は母親に似ていないので、父親に似ているのだろう。
彼女は白井桜子の父親がずっと前に亡くなっていて、母親と二人で暮らしていたことを漠然と覚えていた。
沢井恭子が今このように尋ねるのは、実際とても失礼なことだった。
しかし白井桜子は彼女の性格を理解していて、きっと何か理由があるのだろうと思い、素直に答えた。「白井彰よ。何かあったの?」
「別に」沢井恭子は答えた。彼女は後で白井隆司の二番目の伯父の名前を聞いてみようと決めた。
事の真相がはっきりするまでは、白井桜子に何も言えない。もし違っていたら、気まずくなってしまうではないか。
白井桜子はこの件を気にかけなかった。
数人が座って話をしていると、沢井恭子はようやく、佐藤澄夫と白井桜子が執事と一緒に来なかったのは、白井桜子の方でまだ処理しなければならない事があったからだと分かった。
山崎武弘が死んだので、白井桜子は離婚手続きをする必要がなく、直接死別の手続きをした。
そして山崎武弘の母親も亡くなっており、唯一の妹の山崎夏枝は精神的に大きなショックを受け、今は生きているのが辛いような状態で療養院に入院している。
そのため山崎家の全ての資産は、白井桜子のものとなった。
遺産の整理をしている時、白井桜子は山崎家が実は最初はそれほどお金を持っていなかったことに気付いた。これほど多くの年月、完全に彼女の声で稼いできたのだ。だから彼女は聖母のような心は持たず、直接そのお金を受け取り、全て佐藤奈々子に与えた。これは子供のこれまでの年月の補償とした。
昨日やっと山崎家の財産を奈那子の名義に変更したところで、佐藤さんから電話があり、二人に来るように催促された。
白井さんの母親も一緒に来て、佐藤さんは彼女が不安定な生活を送ることを心配して、近くに三階建ての別荘を見つけ、さらにメイドを雇って住まわせた。
これから双方で佐藤澄夫と白井桜子の結婚式について話し合うことになる。
この時、二階で。
佐藤和利の驚きの声が聞こえてきた。「つまり、君は今大きな遺産を相続したってこと?!」
山崎奈々子は泣き虫さんで、うなずいた。