佐藤大輝は言い終わると、五十嵐紀代実の方を向いた。「行こう」
五十嵐紀代実の目は真っ赤になっていた。
白井隆司と知り合ってから、家族は白井家には逆らえないことを知っていた。
しかし今、幼い頃から海外で育ち、彼女とはあまり親しくなかったこのいとこが、彼女の前に立ちはだかった。
だから彼女は躊躇なく佐藤大輝の後ろについて行った。
沢井恭子は初めて佐藤大輝が怒るのを見た。この怒り方は以前とは少し違っていて、かっこよさと威厳があり、男としての責任感も感じられた。
わーお~
彼女は心の中で口笛を吹き、そして微笑みながら彼の側についていった。
かつての胸の高鳴りさえ感じた。
こんな佐藤大輝が好きだった。
三人は満足したが、白井家の者たちは焦った。
白井隆司は五十嵐紀代実の手首を掴んだ。「紀代実……」