「……」
佐藤大輝は、まるで灼熱の自分を突然氷雪の世界に放り込まれたかのように感じ、瞬時に頭が冴え渡った。
彼は一度咳払いをした。
男性の喉仏が上下し、吐き出される息は熱く、沢井恭子の眼差しにも少し落ち着きのなさが混じった。
実は当時付き合っていた頃、二人は基本的に適度な社交距離を保っていた。公園を散歩する時も人目が多く、純粋な二人はほとんど手も繋がなかった。
だから彼がプロポーズした後、二人がホテルに直行したのは、まるでロケットに乗ったかのようだった。
当時の彼女には佐藤大輝の考えが分からなかった。ホテルに行ったのも、彼からのメッセージで呼び出されただけで、そして覚えているのは、部屋に入るなり彼に抱きしめられてキスされたことだった。
彼を押しのけようとも思った。