第324章 掌の表と裏

白井奥さんは老眼鏡越しに、白井恵理子のスマートフォンを覗き込んだ。

画面にはクラス全員の写真が映っていた。新入生が来るたびに集合写真を撮るのは、幼稚園の決まりだった。

写真の中の一人一人が小さく、白井恵理子が写真を拡大して佐藤奈々子を見つけても、白井奥さんが見えるほど拡大すると、写真はぼやけてしまっていた。

それでも白井奥さんは、写真を通して何か懐かしい感覚を覚えた。

しかし、どれだけ見ても、はっきりとは見えなかった。

彼女は口を尖らせた。「ただの小娘が、私の孫の枠を奪おうだなんて、とんでもない!」

彼女は震える手で白井恵理子の頭を撫でた。

傍らの沢井彩芽はそれを見て安堵の息をつき、すぐに言った。「お義母様、林院長に電話をされますか?」

白井奥さんは携帯を取り出した。「ええ、今すぐにでも!」

しかし林波津子の番号に電話をかけようとした時、白井奥さんは何かを思い出したように、すぐに電話を切り、沢井彩芽の方を向いて言った。「林波津子さんは退院したばかりだから、この時間に邪魔するのは良くないわね。こうしましょう、後で掛け直すわ。」

沢井彩芽は彼女が急に考えを変えた理由が分からなかったが、頷くしかなかった。

白井奥さんは言った。「さあ、まず恵理子を連れて果物でも食べに行きなさい。あなたもまだ夕食を食べていないでしょう?私から連絡があったら知らせるわ。」

沢井彩芽は頷いた。

彼女は白井恵理子の手を引いて部屋を出た。玄関に着くと、彼女の目が一瞬光り、子供を家政婦に預けてから、自分の部屋に入った。

部屋に入るとすぐにパソコンの前に座り、電源を入れてヘッドフォンを付けると、案の定、白井奥さんが例の「次男」に電話をかけているのが聞こえてきた!

沢井彩芽は眉をひそめた。

実際には次男など存在せず、彼女が嫁いできてから、白井奥さんはずっと付き合いづらく、いつも彼女を困らせていた。

白井奥さんが彼女を標的にしているわけではないことは分かっていた。ただ、白井家の次男が家出してから、彼女の性格が変わってしまい、頑固で気難しくなってしまったのだ。

家には四人の息子がいたが、彼女は他の三人が良い暮らしをしているのを見るたびに、次男の苦労を思い出してしまい、そのため家族の誰に対しても良い顔をしなかった。