第327章 紛争

沢井彩芽が外に出ると、林院長が近くで沢井恭子と話をしているのが見えた。

林院長は命を救ってくれた恩に感謝していた。「景...沢井さん、あの日は本当にありがとうございました!」

相手が自分の身分を明かさなかったことに沢井恭子は満足していた。林院長が自分の意図を理解してくれたことを知り、手を振って言った。「どういたしまして」

しかし林院長は複雑な表情で沢井恭子を見つめ、申し訳なさそうに言った。「お呼びしたのは、スパートンの弟子入りの四番目の枠について説明させていただきたかったからです...」

彼女は長い間躊躇して、どう切り出せばいいのか分からなかった。

沢井恭子は彼女の様子を見て、何かを悟ったようだった。「四番目の枠は、院長先生がお願いしたものですか?」

林院長は頷いた。「白井奥さんのためにお願いしたんです。幼稚園の株式の三分の一をスパートンに譲りました」

沢井恭子は少し驚いた。

林波津子院長は苦笑いを浮かべながら説明した。「当時私がこの幼稚園を設立した時、資金が足りなくて、白井奥さんが支援してくださって、多額のお金を貸してくださいました。後に幼稚園が軌道に乗って、三分の一の株式をお渡ししようとしたのですが、どうしても受け取ってくださらなかったんです。あの方は、友人を助けるときは本当に心からなんですよ...」

林波津子院長はここまで話して、余計なことを話してしまったことに気づき、急いで話題を戻した。「その三分の一の株式は、彼女が受け取らなかったとはいえ、私はずっと彼女のものだと思っていました。今回スパートンが我が校の客員教師を引き受けてくださり、教育リソースを提供してくださったのは、お子様たちの才能を惜しむ気持ちもありますが、その三分の一の株式と、私とスパートンの長年の付き合いがあったからこそです。その縁を使って、もう一枠増やしていただいたのは、白井奥さんのためでした...」

彼女の説明は明確で、沢井恭子もすぐに意図を理解した。

林院長は公平な人として知られているが、人である以上、私心がないわけではない。

スパートンのような教育の専門家が大和に来て弟子を取り、この名門幼稚園で客員教師を務めるというのは、間違いなく林院長が大金を出したからだろう。