第349章 彼女の顔は見覚えがある

白井奥さんが入ってくると、まず白井隆司の位牌の前に行き、白井隆司の見慣れた顔を見ました。記憶の中よりもやや痩せていただけでしたが、白井奥さんの涙が止めどなく流れ落ちました。

彼女は位牌の前で泣き崩れました。

一時間が経って、やっと目を腫らして出てきて、白井さんの母親の前に座りました。

白井さんの母親は手紙を一通取り出して白井奥さんに渡しました。彼女は急いで開封し、最初の一文を読みました:「母上様へ。この手紙をお読みになる時には、私の所在を突き止められ、私がすでにこの世を去っていることをご存知のことと思います。不孝の罪をお許しください。孝行を尽くすことができず、また当時の家出についても無断で出て行ってしまい申し訳ありません。

私はどれほど、あなたが私を見つけないことを願っていたことでしょう。妻と桜子には、あなたのことを一切話していませんでした。私の死をあなたに知られたくなかったのです。白髪の親が黒髪の子を見送ることになるのを避けたかったのです……

すでに私を見つけられた以上、真実をお話しします。当時、私が家出したのは見合いを拒否したからではありません。がんが見つかったからなのです……」

白井奥さんはここまで読んで、手が激しく震え始めました。

彼女は驚愕して手紙の内容を見つめ、見慣れた筆跡を見ながら、心が痛く締め付けられました!

なんと、当時次男が家出したのは、がんを患っていたからだったのです!

彼は自分があとどれだけ生きられるか分からなかった。一年か二年、あるいは五年か八年かもしれない。しかし、母親に白髪の親が黒髪の子を見送るという残酷な思いをさせることはできなかったのです。

そこで彼は口実を作り、見合いを拒否するという理由で出て行ったのです。

彼は静かに外で死のうと思っていました。出て行く前に、母親に手紙を残し、自分が最も望む生活は、心から愛する人を見つけて、穏やかに一生を過ごすことだと伝えていました。

当時、そんな人に本当に出会えるとは思っていませんでした。

彼は海浜市のがん患者支援グループで、白井桜子の母親と出会いました。彼女もその時慢性のがんを患っており、二人は互いに共感し、励まし合いました。

二人は幾度もの危機を乗り越えました。

白井さんの母親との同じような経験が、二人の間に感情を芽生えさせました。