第357章 本田家の小師叔

沢井恭子は尋ねた。「どこにいるの?」

「京都よ!」沢井千惠は嬉しそうに言った。「まだ生きているわ。当時浦和に一緒に行った人たちを見つけたの。彼らは農業研究のために行ったのよ。お父さんは彼らのリーダーだったわ。彼らはお父さんの身分は知らなかったけど、確かなのは、当時お父さんとお母さんが別れた後、京都に戻ったということ。だから、この街のどこかにいるはずよ!」

沢井千惠はため息をつきながら言った。「私、偶然会えるかしら?」

「難しいでしょうね」

沢井恭子は車窓の外の往来を見つめながら考えた。京都にはこれほど多くの人がいる。大海の中から一粒の砂を探すようなもの。偶然に出会えるはずがない。

でも……

「私が調べてみる」

沢井恭子はゆっくりと口を開いた。

沢井千惠は娘が様々な人脈を持っていることを知っていた。彼女が約束したことは必ず実現できる。そのため、この言葉を聞いて即座に喜んで同意した。

沢井千惠は優しく細かいことまで気にかけて、寒くなったから服を着るようにと注意した。

沢井千惠がまだ話し続けようとするのを見て、沢井恭子はゆっくりと言った。「お母さん、お父さんが呼んでるんじゃない?」

沢井千惠は即座に「そう?じゃあ切るわ。見てくる」と言った。

「……」

沢井恭子は口角を引きつらせながら、携帯を下ろした。

何か言おうとした瞬間、目の前が暗くなった。

佐藤大輝の顔が突然目の前に大きく現れた。男の肌は完璧で、毛穴さえも見えないほどだった。彼の吐息が近づき、沢井恭子の瞳孔が僅かに縮んだ。

次の瞬間!

男の冷たい唇が、彼女の唇に触れた。

沢井恭子の体が硬直した。

以前若い彼氏と付き合っていた時、国内でも海外でも、最大のスキンシップは手を繋ぐことだけだった。そしてあの夜は……

でもあの夜の佐藤大輝は罠にはめられて薬を飲まされており、急いでいて前戯もほとんどなかった……

沢井恭子にはこういった経験がなく、一瞬にして心臓が喉元まで上がってきたように感じ、息も止まってしまった!

男性も彼女を驚かせないように、柔らかい唇で軽く触れただけですぐに離れた。

沢井恭子は最初に前の座席を見た。山村治郎は何も見なかったかのように、黙々と運転を続けていた……