150 温もり

佐藤明は息子の突然の怒りに驚き、声が弱まった。「あなた、どうしたの?」

「行こう!家に帰ろう!」二見和利は佐藤明を引っ張って外に向かい、呆然としているカメラマンの手からスマートフォンを奪い取った。

「ちょっと、これは証拠なのよ!」佐藤明は不満げに叫び、二見和利の手にあるスマートフォンを取ろうとした。

二見和利は彼女の手を避け、怒りを抑えながら低い声で言った。「お母さん、お願いだから、帰ろう。これ以上恥をかかないで!」

入り口には状況が分からない数人のスタッフが集まっていた。

佐藤明は強がりながらも内心は弱気で叫んだ。「私が何を恥ずかしがることがあるの!奈津子が恥ずかしがらないなら、私が何を恐れることがあるの?」

上階の窓から佐藤明が二見和利に連れて行かれるのを見ていた二見奈津子はほっとした。