女子生徒は原詩織の口から佐藤家の佐藤和音への処置結果を聞き出せなかったものの、原詩織の話から佐藤直樹を階段から突き落とした人物が佐藤和音だと確信した。
その女子生徒の名前は江口沙央梨といい、原詩織、佐藤直樹と同じクラスの高校三年生の実験クラスの国語委員で、国語の成績は非常に優秀で、他の科目の成績も悪くなかった。容姿は平凡で、原詩織とは仲が良かった。
江口沙央梨は佐藤直樹に好意を持っており、以前は佐藤和音に近づこうとしたこともあった。結局のところ、佐藤和音は佐藤直樹の実の妹なので、憧れの人の妹と仲良くなれば、憧れの人との距離も縮まるはずだと考えたのだ。
しかし佐藤和音は彼女を相手にせず、遠慮なく「無駄な夢を見るな」と言い放った。
江口沙央梨はもちろん納得できなかった。なぜ佐藤直樹のことを好きになるのが無駄な夢なのか?佐藤和音こそ自分が何者なのかよく考えるべきだ!
江口沙央梨は佐藤和音を通じて佐藤直樹に近づくことができなかっただけでなく、佐藤和音に対して腹立たしい思いを抱くことになった。
そこで江口沙央梨は原詩織に取り入ろうとした。
悪魔と呼ばれるほどの性格の佐藤和音に比べると、原詩織の性格は天使と言えるほどだった。
江口沙央梨は原詩織にしつこく尋ねた。「そうだ、詩織。私たち、佐藤直樹くんのお見舞いに行けないかな?クラスのみんなが寄せ書きを用意して、彼に渡したいって言ってるんだけど、クラスで佐藤直樹くんと連絡を取れているのは詩織だけだし、どの病院のどの病室にいるのかも知ってるでしょ?」
原詩織は答えた。「佐藤直樹くんは今、みんなに会いたくないと思うわ。ゆっくり休ませてあげましょう。」
原詩織は江口沙央梨の本心を知っていたが、江口沙央梨を喜ばせるために佐藤直樹の気分を害したくなかったし、江口沙央梨の願いのために佐藤直樹との関係を壊すのは得策ではなかった。
江口沙央梨は少し落胆して言った。「せめて私たちが作った寄せ書きを佐藤直樹くんに渡してくれない?私たちが直接行かなければ、邪魔にはならないでしょう。」
原詩織は江口沙央梨が不機嫌になったのを察し、安心させるように言った。「数日後、彼の気分が良くなったら、また聞いてみるわ。週末にみんなで見舞いに行けるかどうか。」