栄光高校は大阪市でナンバーワンの私立高校で、ここで学べるのは、成績が特別優秀か、家庭環境が特別良いかのどちらかだった。
原詩織は成績が特別良い方で、佐藤和音は家庭環境が良い方だった。
そして佐藤和音の兄、佐藤直樹のように、両方兼ね備えている者もいた。
佐藤和音は高校一年生で、今年の九月に入学したばかりだった。
佐藤直樹や原詩織のような特進クラスとは違い、佐藤和音は普通クラスでも成績が最下位だった。
佐藤和音が一年八組の教室の入り口に着くと、教室にはすでに多くのクラスメートが来ていた。
佐藤和音を見て、みんなが驚きと信じられない表情を浮かべた。
佐藤和音は彼らを気にせず、まっすぐ自分の席に向かった。
彼女の席には物が山積みにされていた。
そして、彼女の持ち物は全て消えていた。
佐藤和音は教室の後ろの雑物棚で自分の持ち物を見つけた。乱雑に投げ捨てられていた。
一瞬にして教室の空気が凍りついた。
佐藤和音の視線が隣の席の生徒に向けられた。
隣席の生徒は慌てて緊張した様子で説明した。「違う、私じゃない、秋田さんよ!秋田さんが人を連れてきてやったの。私にはそんな勇気ないわ!」
佐藤和音の隣席の生徒にとって、秋田さんも佐藤和音も、どちらも手を出したくない相手だった。
佐藤和音は秋田さんが誰なのか知っていた。原作では、秋田さんはヒロインの原詩織とも仲が良く、その関係は高校時代にはそれほど表面化していなかったが、社会に出てからは、秋田さんは義理堅く原詩織のいくつかのトラブルを解決してあげたことがあった。
原詩織のキャラ設定は、とても思いやりがあり、人付き合いの上手な女の子だった。
メイドの娘から後の地位まで、周りの人々の助けなしには辿り着けなかった道のりだった。
噂をすれば影の如し。
秋田緑の方に連絡が入り、取り巻きを連れて勢いよく教室の後ろのドアから入ってきた。
佐藤和音を見るなり、凶暴な形相で突進してきた。
秋田緑は女子生徒の中でも背が高く、短髪で、顔は少し幅広く、整った顔立ちをしていた。
片耳にピアスをしており、それは簡単に外せるもので、先生がいる時は外し、いない時はつける、不良っぽい雰囲気を醸し出していた。
教室の他の生徒たちは自然と距離を取り、このお姉さん的存在に関わろうとはしなかった。