佐藤和音は少しも焦っている様子もなく、表情は穏やかで、目は澄んでいて、話し方さえもゆっくりとしていた。
反対に、教務主任と秋田緑の方が彼女によって怒りを募らせていたが、それを表に出すことはできなかった。
「さあ、もう遅い時間だ。一日の計は朝にあり、皆さんは時間を大切にして、しっかり勉強しなければなりません。朝読書というこの貴重な時間を無駄にしてはいけません!皆さんの最も重要な任務は勉強であることを忘れないでください。その他の考えるべきでないこと、やるべきでないことは一切考えたり、やったりしてはいけません!」
教務主任は皆に二言三言訓示を与え、学級委員に全クラスの朝読書を指導させた後、すぐに立ち去った。佐藤和音を見ているとまた腹が立つからだ。
秋田緑は胸に怒りを抱えていた。彼女はこの朝、佐藤和音に翻弄されていたと感じ、腹立ちをどこにぶつければいいのか分からなかった。
重要なのは、今、教務主任が本当に佐藤和音のために監視カメラの映像を確認することを約束してしまったことだ!彼女はこの件をどうやって揉み消すか、よく考えなければならなくなった!
秋田緑は去り際に佐藤和音を強く睨みつけた。その眼差しは佐藤和音に「覚えていろ!」と言っているようだった。
佐藤和音の隣席の生徒は、こっそりと何度も和音の様子を窺っていた。七日間休んでいた佐藤和音と以前との違いを観察しているようだった。
佐藤和音の隣席は大井心といい、清楚な容姿で、少し臆病な性格だった。
以前の佐藤和音とは普通の関係で、良くも悪くもなかった。
元々の佐藤和音は気性は良くなかったものの、是非をわきまえない人間ではなく、大井心が彼女に悪いことをしなければ、積極的に大井心をいじめることもなかった。
大井心はしばらく躊躇した後、やっと佐藤和音に声をかけた。「和音さん、後ろに落ちた本を拾ってきましょうか。すぐに授業で使うし……」
大井心は心の中で申し訳なく思っていた。本が投げ捨てられた時、その場にいたのに、何もできなかったからだ。
「いいわ」佐藤和音は「メス」キャンディーを口に含んだまま答えた。彼女は甘いものが好きで、一度食べ始めたキャンディーは最後まで食べきるべきだと思っていた。無駄にはできない。
「拾わなくていいの?」