教導主任は心の中で腹を立てていた。なぜこんな飴を学校に持ってくる必要があるのか?わざと面倒を起こしているのだろう!この佐藤和音は本当に性格が悪い!
しばらくして教導主任は歯を食いしばりながら言った。「誤解だったようですね。みんな散りなさい。クラスの委員長は?早く朝の読書を始めなさい!」
解散する以外に方法はなかった。
栄光高校には生徒が飴を持ってくることを禁止する規則はなかったのだ。
教導主任が立ち去ろうとしたとき、佐藤和音にはまだ言いたいことがあった。
「それと、私の教科書が後ろに投げ捨てられました。」
佐藤和音の声は穏やかで、話す速さもゆっくりとしていた。告げ口をするような口調ではなく、ただ事実を述べているだけだった。
教導主任はその言葉を聞いて教室の後ろに散らばった教科書を一瞥したが、心の中では関わりたくなかったものの、無視するわけにもいかなかった。
クラスの生徒全員の前で、これを放置すれば無責任と見なされるだろう。
もし今日彼がここにいなければ、来なくても良かったのだが、目の前で起きたことを見て見ぬふりをして立ち去るのは、さすがにまずいだろう。
結局、クラスメートの教科書を投げ捨てるような行為は確かに悪質で、栄光高校のような校則の厳しい学校では許されないことだった。
そこで教導主任は仕方なく形式的にクラスの生徒たちに尋ねた。「誰がやったんだ?自主的に名乗り出なさい。私が発見してからでは、厳しく処罰することになりますよ。」
クラス中が水を打ったように静まり返った。みんな秋田緑がやったことを知っていた。
秋田緑がそれをやった時、1年8組の多くの生徒が現場にいた。
秋田緑は教導主任の背後に立ち、警告するような目つきでクラスメートたちを見回した。
誰かが言い出したら、後でその人を懲らしめてやる!という意思表示だった。
クラスメートたちは次々と沈黙を保ち、最初に佐藤和音に教えた隣の席の生徒も黙って頭を下げた。秋田緑を怒らせるのが怖かったのだ。
教導主任も適当に対応した。「誰も知らないようですね。とりあえずこれで。後で思い出した人や何か発見があった人は、私の事務室に報告に来てください。」
それはもう、事実上この件に続きはないということだった。
秋田緑は口角を上げ、佐藤和音に挑発するような視線を送った。