秋田緑はついに彼女の二人の取り巻きを連れて高一の八組の教室から出て行った。
彼女が去った後、クラスメイト全員がほっと胸をなでおろした。
彼女がいる時は、みんな息をするのも怖かった。うっかり彼女の機嫌を損ねてしまうのではないかと恐れていたのだ。
その時、佐藤和音は机の上から黒い立方体の物を取り上げた。
その中からメモリーカードを取り出した。
そして持参したノートパソコンに挿入した。
隣にいた大井心は目を丸くした。
すると佐藤和音のパソコンの画面に、先ほどの秋田緑たち三人の映像が映し出された。
「あ、あなた...録画したの?」大井心は信じられない表情を浮かべた。
「学校の監視カメラはあまり役に立たないから」
佐藤和音は秋田緑が理事の娘だということを知っていたので、学校の監視カメラが彼女に対して何の脅威にもならないことは容易に想像できた。
だから学校の監視カメラよりも自分で録画する方が確実だし、自分で購入した機器は音声も同時に録音できる。
大井心の質問に答えながら、佐藤和音は素早くキーボードを叩き、この動画に簡単なモザイク処理と音声処理を施した。
音声処理は主に「佐藤和音」という名前を消すためで、和音は動画の中に自分の名前が出るのを避けたかった。
大井心はまばたきを繰り返した。学校の監視カメラが役に立たないことは知っていたが、佐藤和音の先見の明には感心させられた。
処理が終わると、佐藤和音は動画をアップロードし、お金を払って有名なインフルエンサーに拡散してもらった。
午後になると、何人かのSNSインフルエンサーが次々とこの動画を転載した。
下校時間になる前に、この話題はトレンド入りしていた。
モザイク処理されていたため、外部の人々は動画の中で自分が理事の娘だと主張する傲慢な女子生徒が誰なのかは分からなかったが、それは彼らが意見を述べることの妨げにはならなかった。
【これはひどすぎる!理事の娘というだけで好き放題やってるじゃないか!】
【これは間違いなくいじめだ!学校側は何も対策しないのか?】
【誰か教えてくれ、これはどこの学校?その偉そうな理事に会ってみたいものだ~】
【見ろよ、上手く生まれることがいかに重要かってことだな。[犬の顔]命の保険だわ】
すぐにコメント数は数千に達し、さらに増え続けていた。