第55章 パーティー(4)

佐藤隼人は森村晃が何を言おうと、妹の悪口を聞くつもりなどさらさらなかった!

佐藤和音は佐藤隼人の背中を見つめながら、胸の中が温かく、少し熱くなるのを感じた。

これが初めてだった。誰かが彼女の前に立ちはだかってくれたのは。

森村晃も呆れ果てた。佐藤隼人のような頭の固いシスコンと話しても全く通じない:

「はいはい、もう議論はやめだ。お前が選択的に耳も目も不自由なのは勝手だが、後で自分が騙されたときに分かるさ!」

「お前に言われる筋合いはない!今すぐ妹に謝れば済むことだ!」

「何で謝らなきゃならないんだ?俺が彼女の足を踏んで、彼女も俺の足を踏み返しただけだろう。なんで俺が謝らなきゃならないんだ?」

森村晃と佐藤隼人の口論は激しさを増していった。

そこへ上杉望が現れた。「何を喧嘩してるんだ?俺のパーティーを台無しにする気か?」

ここは上杉家で、上杉望が主催するパーティーの最中だった。

森村晃は慌てて上杉望に説明した:「望さん、僕が喧嘩を売ったわけじゃないんです。佐藤隼人が妹に謝れと言って聞かないんです。些細なことなのに、大げさにしてるんです。彼が許してくれないから仕方がないんです。」

上杉望は佐藤隼人と、その後ろに守られるように立つ佐藤和音を一瞥した。

そして森村晃の方を向いて言った:「謝らないなら、この騒ぎが秋次おじいさまの耳に入ったときは、知らないぞ。」

「いや、望さん、僕一人の問題じゃないんです。彼らが...僕は彼らに何もしていないんです...」

森村晃は上杉望に説明し、間違っているのは自分ではないから、謝る必要がないことを分かってもらおうとした。

「好きにしろよ。俺は離れとくから、後でお前に巻き込まれないようにな。」

上杉望はそう言い放って、数歩後ずさった。

関係を切り離す意図は明白だった。

森村晃は心中穏やかではなかった。なぜこの件が全て自分の責任になるのか?明らかに佐藤隼人が執拗に追及してきているのに。

森村晃は再び上杉望を見つめ、今朝出かける前の父親の言葉を思い出した。パーティーでは良い印象を残すように、と。

できれば秋次おじいさまと話ができれば最高だし、それができなくても秋次おじいさまの機嫌を損ねて森村家に迷惑をかけるようなことだけは避けるように、と。