研究所内で、吉野教授はようやく半月も気にかけていた「ファズル先生」に会えた。
「藤田君、君は...彼女が...彼女がファズル先生だと言うのか?」吉野教授は信じられない表情を浮かべた。
吉野教授は今年五十三歳で、白髪交じりの髪は若干心配な量だったが、幸いにもハゲ上がってはおらず、生え際もまだ健在だった。
藤田安広は頷いた。厳かに頷いた。
そう、間違いなく彼女だ。
吉野教授は額に手を当てた。「私は...これは...」
吉野教授は一時的に自分の気持ちを表現する言葉が見つからなかった。
藤田は吉野教授に水を注いだ。「先生、まずは落ち着いてください。私も先ほどしばらく時間がかかって落ち着きました。」
吉野教授はコップを受け取り、何口か飲んで、ゆっくりと落ち着きを取り戻した。
そして再び藤田に尋ねた。「確認したのか?間違いないのか?」
藤田は確信を持って答えた。「確認済みです。正門から入ってくる途中で少し話もしましたが、年齢以外は全て合っています。」
なりすましでもなく、誤解でもない。まさに彼らが探していた人物で、オンラインで約二週間やり取りしていたファズル先生だった。
吉野教授は五十年以上生きてきて、様々な経験をしてきた人物だ。
この件は確かに衝撃的だったが、衝撃を受けた後、吉野教授は冷静さを取り戻した。
山の向こうにも山があり、人の上にも人がいる。彼はこの世に天才が存在することを疑ったことはなかった。
年齢で優劣を判断せず、経験で正誤を決めつけない。
吉野教授の佐藤和音を見る目が変わった。まるで大きな宝物を見つけたかのようだった。
しかし手順通り、吉野教授はまだ佐藤和音の能力と資格を更に確認するための試験を行う必要があった。
これは企業の採用面接と同じように、段階的な選考が必要だった。
そして彼らの研究所の選考は、一般の企業よりもさらに厳しいものだった。
一連のテストと、実験プロジェクトの実践試験を受ける必要があった。
通常この過程は四から五時間かかるが、佐藤和音は二時間八分で完了した。
一連の試験を終えて、吉野教授は興奮と期待で何度も飛び上がりそうになった。
「素晴らしい!素晴らしい!本当に素晴らしい!君こそ我々の研究所が必要としている人材だ!心から研究所への参加を招待したい。」
吉野教授は佐藤和音に正式な招待を出した。