佐藤和音はさらに言った。「でも、私は週に2日しか来られません。それも来月からになります」
今月は週末も補習があるのだ。
来月になって補習が終わってから、週末に来られるようになる。
それも週末に限られる。
「なぜだ?!」吉野教授は慌てて尋ねた。
やっと見つけた天才だから、吉野教授は当然、彼女にすぐに研究所に来て、一緒に研究を始めてほしかった。
「学校に通わないといけないので」佐藤和音は答えた。
「学校?」吉野教授は声を張り上げた。「何の学校だ?高校で教えているようなことを学んで何になる?時間の無駄じゃないか...」
吉野教授には我慢できなかった。佐藤和音の才能で普通の高校の教科書を学ぶなんて...これは才能の無駄遣いではないか?
その時間を研究室で実験に費やした方がいいのではないか?
その時間を新薬開発の議論に使った方がいいのではないか?
「私は学校に通います」佐藤和音は断固とした態度で言った。「平日はオンラインで連絡を取り合えます。来月から週末なら来られます。もしこの条件を受け入れられないなら、私は来ません」
佐藤和音が来ないと言うのを聞いて、吉野教授は焦った。
来ないなんてありえない。こんな逸材が来ないなんてどうしよう?!
吉野教授は断固とした表情の佐藤和音を見て、もどかしさと諦めを感じた。
「わかった、わかった。じゃあ、とりあえずそうしよう。週末だけでも週末で」吉野教授は譲歩した。
同意しなければ、せっかく見つけた天才が逃げてしまうと恐れたのだ。
吉野教授は考えた。佐藤和音は週末2日しか来られないが、それでもないよりはましだ!
今日はやはり喜ばしい日だ。
「他に要望がないなら、今日契約を結びましょう!すぐに関連する契約書を用意させます!」
夜長夢多を避けるため、吉野教授はすぐに佐藤和音と契約を結びたかった。
「先生、彼女はまだ16歳未満です。保護者に来てもらって契約する必要があります」藤田安広が注意した。
「そうだった!」吉野教授は話に夢中になって、そのことを忘れかけていた。
これは研究所が16歳未満の人を採用する初めてのケースだった。