第61章 研究所(2)

「入りたいんです」佐藤和音は入退室カードをかざす場所を指さして言った。

「何度も言っていますが、入れません。手順通りに進めていただかないと。もし皆さんがあなたたち母娘のようにされたら、収拾がつかなくなってしまいます。早くお母様を連れて帰ってください。こんな騒ぎを起こしても何も変わりませんよ」警備員は諭すように言った。

「彼女は私の母ではありません」和音は説明した。

「何が母親じゃないだって?二人一緒に来たのを見たんだぞ!そうでなきゃ、中学生のあんたが一人で研究所に来るわけないだろう?私をだまそうとしないでくれ!そう言って、私が気を抜いた隙に中に入ろうとしてるんじゃないのか?」

警備員は佐藤和音と女性を母娘関係だと確信していた。

「中の人と約束があるんです」和音は冷静な表情で、地面で泣き叫んでいる女性とは全く異なる態度を見せていた。

「何が中の人との約束だ。ごねるだけでなく、今度は嘘までつくのか?」

警備員は呆れた表情で、さらに呆れた口調で言った。

中の人と約束?そんな言い訳は少し安っぽすぎる。研究所の人が中学生と約束するはずがない。

そう思いながら、警備員は地面で駄々をこねている女性を見て、親がちゃんと教育していないから、娘までこんな風になるんだと心の中で思った。

はぁ、まったく。

ちょうどそのとき、研究所の人から和音に場所を確認するメッセージが届いた:

【ファズル先生、どちらまで来ましたか?】

和音は返信した:【玄関です。入れません】

相手はすぐに返信してきた:【少々お待ちください。今すぐ玄関までお迎えに参ります】

約5分ほど待つと、研究所の大門が開いた。

扉が開くと、最初に反応したのは地面に横たわっていた女性だった。

彼女は飛び上がるように立ち上がり、大門に向かって突進した。

警備員は素早く反応し、急いで女性を引き止めた。

女性は必死になって、泣き叫びながら暴れた:「離して!離して!所長に会わせて!」

門の中から白衣を着て、金縁の眼鏡をかけた痩せた男性が出てきた。

すらりとした体つきで、物腰の柔らかそうな容姿だった。

短く刈られた髪で、肌は白く、おそらく研究室で過ごす時間が長いせいだろう。

「先生、私の夫を助けて!先生、夫を助けてください!」