「入りたいんです」佐藤和音は入退室カードをかざす場所を指さして言った。
「何度も言っていますが、入れません。手順通りに進めていただかないと。もし皆さんがあなたたち母娘のようにされたら、収拾がつかなくなってしまいます。早くお母様を連れて帰ってください。こんな騒ぎを起こしても何も変わりませんよ」警備員は諭すように言った。
「彼女は私の母ではありません」和音は説明した。
「何が母親じゃないだって?二人一緒に来たのを見たんだぞ!そうでなきゃ、中学生のあんたが一人で研究所に来るわけないだろう?私をだまそうとしないでくれ!そう言って、私が気を抜いた隙に中に入ろうとしてるんじゃないのか?」
警備員は佐藤和音と女性を母娘関係だと確信していた。
「中の人と約束があるんです」和音は冷静な表情で、地面で泣き叫んでいる女性とは全く異なる態度を見せていた。