第60章 研究所(1)

「先生、ご安心ください。彼は約束を破るような人ではないと思います」

「どうかな、横取りされないか心配だ」老教授は慎重を期したほうがいいと考えた。

このような人材は、彼らの研究所だけでなく、他の医学機関も獲得を望むはずだ。

だからこそ、先手を打って早めに接触し、可能であれば直接交渉して採用を決めなければならない。

それが最も確実な方法だ。

「はい、分かりました。私が彼と連絡を取り続けます」藤田安広自身もこのファズル先生に強い興味を持っていた。

SCIに掲載された彼の論文を読んでおり、ぜひ意見交換をしたいと思っていた。

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月曜日の午後、佐藤和音は昼食を済ませた後、お腹が痛いと言って保健室に行く許可を先生に求めた。

しかし保健室にはあまり長く留まらず、保健室からもらった許可証を持って学校を出た。