第83章 凌を守る(8)

藤田安広は佐藤和音と大井心が奥野実里の暴力シーンを見ているのを心配して言った:

「喧嘩なんて見るものじゃないよ。帰ろう」

こんな残虐なシーンは、和音さんのような可愛らしい女の子が見るべきではない。

佐藤和音は藤田安広の言葉を聞き入れず、むしろ真っ直ぐに奥野実里の方へ歩いて行った。

誰かが近づいてくるのを感じ、奥野実里は動きを止めた。

彼女は人を殴る時は容赦なかったが、狂ったように無差別に暴力を振るうわけではなかった。

奥野実里は佐藤和音を見て、すぐに彼女だと分かった。

研究所に新しく上がった資料で写真を見ていたからだ。

佐藤和音は四人のチンピラの前まで歩き、足を上げた。

告白した男の顔を一歩で踏みつけた。

この一蹴りは奥野実里の拳に比べれば力は劣るものの。

しかし、佐藤和音が力を込めているのは明らかだった。