第81章 凌を守る(6)

その場にいた全員が呆然としていた。

何が起きたのかを理解する間もなく、この威圧的な女性は既に何発も殴りかかっていた。

拳は速く、強く、正確で、その凶暴な勢いに周りの人々は驚きと恐れを感じていた。

この時、周囲に潜んでいた不良たちの仲間が我慢できなくなった。

次々と奥野実里を止めようと飛び出してきた。

彼らが動き出すと、奥野実里が連れてきた警備員たちが一斉に前に出て、威圧的な雰囲気を醸し出した。

「みんな下がって」奥野実里は後ろの警備員たちに鋭い眼差しで言った。

警備員たちは急いで立ち止まり、前には進まなかった。

恵子姉が下がれと言えば、下がるしかない。

どうやら恵子姉は自分で対処するつもりのようだ。

それもいい、恵子姉が怒っているのだから、誰かに思う存分殴らせないと、後で彼らに手合わせを求めることになり、苦しむのは彼らだ。

奥野実里は一人で四人の不良と戦った。

四人の男が奥野実里を取り囲んで攻撃したが、逆に床に叩きつけられた。

この四人の不良は、普段は威張り散らしているが、実際の体力はそれほど良くなかった。

怠け者で、酒を飲んで夜更かしするか、カラオケで遊び呆けているかで、奥野実里の相手になるはずがない。

校門前で起きているこの光景を、森村晃のアパートで森村晃の縄跳びを見ながらライブ配信を観ていた菊地秋次と上杉望は、はっきりと見ていた。

上杉望は思わず菊地秋次に言った:「秋次おじいさん、小うさぎは私たちの助けは必要なさそうですね。」

既に誰かがデマを流した人々を制裁していた。

少し衝動的ではあったが、効果的だった。

上杉望はまた不思議に思った:「小うさぎはどうやって知恵研究所の人と知り合ったんだろう?」

上杉望は最初、殴りかかった人が誰なのか思い出せなかったが、しばらく見ているうちに、この女性に会ったことがあることを思い出した。

去年、知恵研究所の発表会が上杉家のホテルで開催され、その時たまたまそこにいた上杉望は、この女性と一度顔を合わせたことがあった。

ただし、彼が会った時の彼女は白衣を着た学術界の優秀な人物だった。

そのため、この狂暴なコートを着た女性と研究所の研究者を結びつけることができなかった。

そして上杉望が理解できなかったのは、佐藤和音がどうやって知恵医学研究所の人と知り合ったのかということだった。