翌朝早く、佐藤和音は起床後、紙袋を佐藤おばあさんに渡しました。
「隼人に渡してください」和音は相変わらず、誰かを兄と呼ぶことに慣れていませんでした。
隼人のためのセーターが編み上がりましたが、和音は自分がいつ暇になるか分からなかったので、おばあさんに隼人へ渡してもらおうと思いました。
佐藤おばあさんは紙袋を受け取って中を覗くと、グレーのセーターが入っていました。
前回佐藤正志に贈ったものと同じデザインで、タートルネックのセーターでした。デザインは複雑ではありませんが、とても飽きの来ないものでした。
この数日間、和音が編んでいたのを、おばあさんも見ていました。登下校の時間を使って、和音はセーターを編んでいたのです。
佐藤おばあさんはわざとやきもちを焼いて言いました。「長男は誕生日に一枚もらって、今度は隼人ももらえるのね。この老婆はいつになったらもらえるのかしら。ああ、可愛い孫娘が編んだセーターはきっと特別暖かいんでしょうね」