電話を切ると、佐藤正志は車の中で暫く黙って座っていた。
続いて父親に電話をかけ、この良い知らせを伝えた。
まだ確定はしていないものの、少なくとも希望が見えてきた。
今の佐藤家にとって、希望があることは希望がないよりもずっと良かった。
この知らせを聞いて、電話の向こう側の佐藤賢治も大喜びだった。
「小田百蔵と連絡が取れない場合は、私が実家に行って父に状況を説明し、父の人脈を使って相手と連絡を取ってもらおう」
佐藤おじいさんの人脈は若い世代よりもずっと広く、何か方法があるかもしれない。
とにかくこの人物を招かなければならない!
「分かった。今はまだ少し用事があるから、帰ってから改めて話そう」
佐藤正志にはまだ佐藤賢治と岡本治美に話していないことがあった。
確実な証拠を見つけてから、彼らに話すつもりだった。
電話を切ると、佐藤正志は運転を続け、大阪市郊外の山間部にある葛城山リゾート地区へと向かった。
佐藤正志は直接リゾートホテルの支配人を訪ねた。
「誠也若様、本当にお探しのものはございません。当ホテルがお出ししたくないわけではありません。直接お越しいただいても、私にはどうすることもできません!」
葛城山リゾートホテルの支配人は頭を抱えていた。
一体どうしたことか?毎日のように、ホテルの階段の監視カメラの映像について尋ねる人が絶えない。
前回、秋次おじいさんが問い合わせた時は、直接リゾートホテルの親会社のCEOにまで話が及び、CEOから直接ホテルに対応するよう指示が出た。
彼はすでに電話で佐藤家の若旦那の質問に答えていたのに、この若旦那が直接やって来てしまった。
この佐藤家の若旦那は最近忙しいはずではなかったか?彼の海外のゲーム会社は今まさに絶好調のはずなのに。
「映像が見つからないなら、映像管理の担当者を呼んでください」
佐藤正志はホテルの応接室のソファに座り、威厳のある冷たい態度で言った。
それに比べて、ホテル支配人の体格は小さく見えた。
佐藤正志の前では、品格だけでなく威厳も負けていた。
「それは…」支配人は困った様子だった。
「何か人に言えないことでもあるのですか?」佐藤正志の眼差しは冷たかった。
「いいえ、誠也若様、このようなご要求は当ホテルを困らせます」