「玄関に見に行きましょう」しばらく考えた後、佐藤直樹が提案した。
「はい」原詩織は答えた。
二人は一緒に別荘の玄関に向かった。
「プレゼントをどこに置いたの?」佐藤直樹は原詩織に尋ねた。
「ここです」原詩織は玄関の横を指さしながら言った。「あの日、皆さんと一緒に食事をすることを知らなかったので、玄関に置いておけば誰かが見つけて中に持って行ってくれると思って...」
もし原詩織がここに置いたのなら、誰かが見つけて中に持って行ったはずだ。
佐藤直樹は周りを探してみると、玄関からそう遠くない茂みの中に紙袋を見つけた。
紙袋は露に濡れて、しわくちゃになっていた。
明らかにその袋は数日間風雨にさらされていたようだった。
佐藤直樹は袋を開け、中から黒いセーターと刺繍の入った黒いマフラーを取り出した。
「これがあなたが用意したプレゼント?」佐藤直樹は原詩織に尋ねた。
原詩織は前に歩み寄り、心虚な様子でセーターとマフラーを慎重に確認してから、頷いた。
彼女の心臓は激しく鼓動していた。こんな嘘をつくのは初めてで、とても不安を感じていた。
彼女は心の中で繰り返し言い聞かせた。これさえ乗り越えれば大丈夫、何も問題ない、この件を何とかできる、お母さんの仕事を守ることができる、と。
佐藤直樹は手に持っている袋を見ながら、眉をひそめた。
つまり詩織は嘘をついていなかった。彼女は本当に兄にプレゼントを贈っていたのだ。
しかし、なぜか彼女が贈ったプレゼントは茂みに捨てられ、佐藤和音がちょうど同じような包装で兄に同じ色のセーターとマフラーを贈っていた。
どうしてこんなに偶然が重なるのだろう?
佐藤直樹が考え込んでいる時、佐藤正志が近づいてきた。
「どうしたんだ?」佐藤正志が尋ねた。
佐藤正志の視線は、佐藤直樹が手に持っているしわくちゃの紙袋と、デザインは違うものの同じく黒い手編みのセーターに向けられた。
そして横にいる原詩織にも目を向けた。
「兄さん、詩織は嘘をついていませんでした。ほら、これが彼女があなたの誕生日プレゼントとして用意したものです。ただ、なぜか彼女が用意したプレゼントは茂みに捨てられていたんです」
佐藤直樹は佐藤正志に説明しながら、手にしていた紙袋を渡した。