さっきは写真だけで音声がなく、内容は推測するしかなかったが、今は音声も映像もある。
会話の内容は明白で、その男は他でもない原詩織の父親だった。
山田健司は生活指導主任の部屋で騒いだ時、自分の身分を証明するために戸籍謄本と昔の家族写真まで出していた。
そしてその部分も全て録画され、フォーラムに投稿されていた。
動画には原詩織自身が父親を山田健司と認める場面まであった。
この場面を見た生徒たちの原詩織を見る目が完全に変わった。
さっきまでは疑いだけだったが、今や動かぬ証拠となった。
さらに重要なのは、さっきの原詩織の態度と比べると、この動画の内容は完全に彼女の顔に泥を塗るものだった。
原詩織は動画を見た瞬間、顔から血の気が完全に引いた。
さっき原詩織に謝ったばかりの江口沙央梨は目を見開いた。
江口沙央梨は我慢できず、怒って原詩織に詰め寄った。「これはどういうこと?この人は本当にあなたのお父さんなの?お父さんなら、さっきの態度は何だったの?」
「私は...」原詩織は体を微かに震わせ、初めてこのような窮地に立たされ、全身が冷え切っていた。「私は何も...ただあなたのことを怒ってないって言っただけ...」
「怒ってないって?それじゃ、サイトの人があなたのお父さんだって私が勘違いしてたって認めたことになるでしょ?写真の男性との関係を否定してたってことじゃない?」
江口沙央梨も馬鹿じゃない。原詩織は確かに何も言わなかったが、そう言うことは以前の自分の推測が間違っていたと言っているようなものではないか。
「そんなつもりじゃなかったの、誤解よ」原詩織は説明した。
「そう、そう、私の誤解ね!まさに親の因果が子に報い、あなたのお父さんがそんなクズなら、あなたもたいして変わらないってことね!」
江口沙央梨が怒ったのは、さっきの原詩織の曖昧な態度もあるが、それ以上に長い間、原詩織と佐藤家が昔からの付き合いだと思っていたからだ。
江口沙央梨は原詩織に騙されていたと感じた。
今は自習の時間で、クラスメイト全員がいて、江口沙央梨と原詩織の言い争いをみんなが聞いていた。
原詩織はみんなの視線を感じ、全身が冷え切り、かつてない屈辱感に包まれた。
彼女の自尊心はこの瞬間に粉々に砕かれた。
彼女は教室から逃げ出したいと思った。
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