第144話 せいぜい1人のファンを失うだけ

奥野実里は嫌そうな顔で小田百蔵の話を遮った。「ゲームなんかしてる場合じゃないでしょう。みんな出て行きなさい。こんなに大勢が詰めかけて、部屋の空気が悪くなってるわ。患者はゆっくり休めないじゃない」

病室には8、9人が立っており、みんながペチャクチャと喋り続けていた。患者がゆっくり休めるはずがない。

奥野実里は追い出し始め、最初に追い出されたのは小田百蔵だった。

佐藤おばあさんも口を開いた。「もういいわ、この話は後にしましょう。おりこはまだ具合が悪いのだから」

そう言うと、おばあさんは入口に立ち尽くす佐藤直樹に向かって言った。「実の妹なのよ。骨は折れても血は繋がってるのだから、物事は良い方に考えなさい。変な考えに囚われて、心を曇らせてはいけないわ」

佐藤おばあさんは具体的には言わなかったが、事情を知っている人なら、その言葉の意味を理解できただろう。