「うわっ!本当に野田国夫だ!ジュピターの野田国夫!」
奥野実里は興奮気味に反応し、藤田安広の首を掴んで締め付けた。
「藤田君見て、野田国夫よ!」
「恵子姉、アイドルに会ったら、サインをもらうべきですよ……」藤田安広は息苦しそうに、やっとの思いで声を出した。
首を締め付けるのではなく。
「そうだわ!サイン!写真も!」
奥野実里は我に返り、ポケットを探ったがペンも紙もなかった。
それなら写真だけでも、と奥野実里は急いで携帯を取り出した。
佐藤明人は今の自分と写真を撮りたがる奥野実里を見て、一回転して佐藤和音のベッドに転がり込み、布団をめくって中に潜り込んだ。
ファンは諦めても、顔は守らなければならない。
どう言っても彼は実力派アイドル歌手なのだから。
佐藤和音は横の盛り上がった塊を見下ろした。