第146章 秋次おじいさんのお見舞い(1)

奥野実里は小田百蔵の方を振り向いて、「小田さん、今日は仕事の話はしないって言ったでしょう」

「いや、手元に何件か症例があって、ちょっと意見を聞きたかったんだけど」

小田百蔵は取り入るような表情を浮かべた。

人に頼み事をする時は、面子なんて関係ない。

藤田安広は小田百蔵をしばらく見つめてから、「どうせ人を待っているんだし、この時間を使って見てみましょうか」

藤田安広は小田百蔵も大変だろうと思い、それに今この病室の前に立っているだけでは何もすることがないと考えた。

奥野実里はもう一度病室の方を気にかけるように見てから、藤田安広と一緒に小田百蔵のオフィスへ向かった。

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しばらくして、上杉望と菊地秋次が到着した。

この時、病室には佐藤明人が佐藤和音に付き添っているだけで、岡本治美は佐藤おばあさんに呼ばれて話をしていた。おばあさんには長男の嫁とじっくり話したいことがあるようだった。