上杉望は時間を無駄にせず、急いでシートベルトを締め、アクセルを踏んで車を発進させた。
スピードを上げながら、上杉望は独り言を言った:
「このウサギちゃんはどうしたんだ?病気が治ってないのに、なんで病院から出てきたんだ?てっきり治ったから退院したと思ってたのに!」
菊地秋次の腕の中で、体が熱く燃えている佐藤和音はすでに完全に意識を失っており、誰かに抱かれていることすら分からない状態だった。
上杉望は更に呟いた:「このウサギちゃんは、まだ俺たちを頼ってくれて良かった。もし大通りで気を失ったらどうするつもりだったんだ?」
上杉望は道中ずっとぶつぶつと文句を言い続けた。
全行程スピード違反で、無理して突っ込める信号は全て突っ込んだが、車が多くて突っ込めない交差点もあった。
この一件で、おそらく彼の運転免許は停止されるかもしれない。
免許停止なんて些細なことだ、最悪また試験を受ければいい。佐藤和音が熱で壊れなければいいんだ。
車が病院の入り口に停まると、菊地秋次は佐藤和音を抱きかかえたまま、急いで病院に入った。
「秋次おじいさん、焦らないでください。私に任せてください。」
上杉望は車を停めた後、急いで追いかけ、菊地秋次から佐藤和音を受け取ろうとした。
上杉望は菊地秋次が焦ることを心配していた。菊地秋次が最もしてはいけないことは焦ることだった。
「消えろ!」
その声は焦りと怒りが混ざっていた。
菊地秋次は足早に進み、上杉望を完全に無視した。
上杉望はただ後を追うしかなかった。
和音は病室に運び込まれた。
「秋次おじいさん、上杉若様、ご安心ください。佐藤さんは普通の発熱です。大きな問題はありません。すぐに解熱するでしょう。」
院長の小田百蔵が自ら駆けつけた。
上杉望だけなら別だが、この方が来られては見て見ぬふりはできない。
同徳私立病院の医師たちは素早く佐藤和音の状態に対処し、点滴を始めた。
「いつ目が覚める?」菊地秋次は小田百蔵に尋ねた。その気迫は鋭かった。
小田百蔵は胸がドキドキして、慎重に答えた:
「それは...個人の体調によりますが、佐藤さんは体が弱っているので...」
小田百蔵は説明しながら、慎重に菊地秋次の表情を観察していた。