第161章 温かい病室(1)

彼女の手は少し冷たく、氷のようだった。手のひらの中に置いて、自分の手の温もりでその小さな手を温めた。

佐藤和音は朦朧とした中で、また悪夢を見始めた。

夢の中で、彼女は霊安室に立っていた。前方の棺の中には冷たい遺体があった。

遺体の顔は、佐藤隼人のものだった。

彼女は茫然自失のまま、遺体から数メートル離れた場所に立ち、一歩も前に進めなかった。

その光景はあまりにも鮮明で、まるで実際に経験したかのように現実味があった。

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上杉望は家の執事に電話をかけ終わった後、佐藤隼人からの電話を受けた。

「上杉、今時間ある?和音が見当たらないんだ。携帯にも連絡が取れない」

佐藤隼人は今外にいて、佐藤和音を探していた。

佐藤和音の携帯は電源が切れていた。

彼はタクシーに乗り、まるで右往左往する蠅のように街中をさまよっていた。

途方に暮れた時、彼は助けを求められる二人を思いついた:兄の佐藤明人と上杉望だ。

佐藤明人に電話をかけたが、出たのは佐藤明人のアシスタントで、明人は今番組の収録中だと言われた。

佐藤隼人は仕方なく上杉望に電話をかけた。

「大丈夫よ、今私と一緒にいるわ」と上杉望は答えた。

上杉望の返事を聞いて、佐藤隼人の世界が一気に明るくなった:

「本当か?和音は本当に君と一緒なのか?大丈夫なのか?」

佐藤隼人は矢継ぎ早に質問を投げかけた。

「大丈夫だから、安心して」と上杉望は急いで答えた。返事が遅れると佐藤隼人が焦ってしまうと思ったからだ。

「どこにいるんだ?今すぐ行く!」

「同徳私立病院よ」

「病院?和音がどうしたんだ?何があったんだ?」

「大したことないから、来てから話すわ」

上杉望は、どうせ佐藤隼人が来るのだから、具体的な症状は来てから話そうと思った。和音が気を失ったと聞いたら心配で仕方がないだろうから。

「わかった」佐藤隼人は急いで運転手に病院まで連れて行くよう頼んだ。

病院に着いて病室の前まで来ると、ドアを開ける前にガラス窓越しにベッドに横たわる佐藤和音の姿が見えた。

「和音ちゃんどうしたんだ?何があったんだ?」

佐藤隼人が突然佐藤和音に向かって駆け出そうとしたが、上杉望に制止された。

「落ち着いて、和音ちゃんは寝ているだけよ。大丈夫だから。そんなに興奮したら起こしちゃうわよ。今は休ませてあげないと!」