彼女の手は少し冷たく、氷のようだった。手のひらの中に置いて、自分の手の温もりでその小さな手を温めた。
佐藤和音は朦朧とした中で、また悪夢を見始めた。
夢の中で、彼女は霊安室に立っていた。前方の棺の中には冷たい遺体があった。
遺体の顔は、佐藤隼人のものだった。
彼女は茫然自失のまま、遺体から数メートル離れた場所に立ち、一歩も前に進めなかった。
その光景はあまりにも鮮明で、まるで実際に経験したかのように現実味があった。
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上杉望は家の執事に電話をかけ終わった後、佐藤隼人からの電話を受けた。
「上杉、今時間ある?和音が見当たらないんだ。携帯にも連絡が取れない」
佐藤隼人は今外にいて、佐藤和音を探していた。
佐藤和音の携帯は電源が切れていた。
彼はタクシーに乗り、まるで右往左往する蠅のように街中をさまよっていた。