佐藤和音がようやく目を覚ましたのを見て、佐藤隼人は急いで前に進み出た。「大丈夫?まだ痛いの?」
佐藤和音は首を振った。
「また嘘ついて。胃腸炎はすごく痛いはずだよ」
「私は痛くない。あなたが悲しまないように」
「うん、僕は悲しまないけど、ちゃんと治療を受けないとダメだよ。もう勝手に出歩かないで」佐藤隼人は真剣に言い聞かせた。
「うん」佐藤和音は真面目な口調で答えた。「先に帰って」
なぜか、傍にいた上杉望は、佐藤和音が佐藤隼人に帰るように言う様子が、世話焼きのお母さんのようだと感じた。ただし、そのお母さんぶりが少し可愛らしかった。
「帰らないよ。せっかく学校に休みの許可をもらったんだから」佐藤隼人は今は全く帰る気がなかった。病気の和音ちゃんの側にいたかった。
佐藤隼人は先ほど、佐藤和音が目を覚ますのを待っている間に学校の先生に電話をかけていた。