岡本治美は焦って、すぐに夫に電話をかけた。
「賢治、和音が、和音が突然病院を飛び出して、友達だという中年男性たちの車に乗り込んでしまったの……」
「何だって?」会社で会議中だった佐藤賢治は、その知らせを聞いて大変驚いた。「落ち着いて。今、病院の入り口にいるんだね?」
「ええ」
「和音は自分から車に乗ったの?」
「そうよ。和音はあの人たちが友達だと言ったけど、どうやって知り合ったのかわからなくて。賢治、どうしましょう?和音に何か危険が及ぶんじゃないかしら?」岡本治美は泣きそうになり、声が震えていた。
「慌てないで。今すぐ行くから」
佐藤賢治は隣の秘書に二言三言告げると、急いで会社を後にした。
道中、今は在宅勤務している佐藤正志にも連絡を入れた。
同時に佐藤家の警備員たちにも連絡を取った。