第154章 怖がらないで、私が処理する(2)

岡本治美は焦って、すぐに夫に電話をかけた。

「賢治、和音が、和音が突然病院を飛び出して、友達だという中年男性たちの車に乗り込んでしまったの……」

「何だって?」会社で会議中だった佐藤賢治は、その知らせを聞いて大変驚いた。「落ち着いて。今、病院の入り口にいるんだね?」

「ええ」

「和音は自分から車に乗ったの?」

「そうよ。和音はあの人たちが友達だと言ったけど、どうやって知り合ったのかわからなくて。賢治、どうしましょう?和音に何か危険が及ぶんじゃないかしら?」岡本治美は泣きそうになり、声が震えていた。

「慌てないで。今すぐ行くから」

佐藤賢治は隣の秘書に二言三言告げると、急いで会社を後にした。

道中、今は在宅勤務している佐藤正志にも連絡を入れた。

同時に佐藤家の警備員たちにも連絡を取った。

一方、岡本治美は佐藤賢治との通話を終えると、すぐに佐藤和音に電話をかけ始めた。

しかし和音の電話は通話中で、つながらなかった。

岡本治美はどうしていいかわからず、焦りまくっていた。

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佐藤和音が車に乗り込むと、車内の人々は丁寧に尋ねた:

「佐藤さん、どちらまでお送りしましょうか?」

「大阪市立第一高校まで」

佐藤隼人のいる学校へ。

「かしこまりました」

「それと、前に頼んでいた人を佐藤邸に連れて行って」

以前逃げ出した葛城山リゾートホテルの映像管理者のことだ。

「承知いたしました。すぐに手配させていただきます」

佐藤和音の要求に対して、男は全て承諾し、完全に従順だった。

大阪市立第一高校。

今日の佐藤隼人はいつもと様子が違っていた。

学校に来てから一言も話さず、普段の活気も見られなかった。

何か重大なことが起きたようだった。

親しい友人たちが声をかけても、大丈夫だと言うばかりだった。

大丈夫だと言う彼の沈んだ様子は、とても大丈夫そうには見えなかった。

数学の授業中、突然教室の入り口に一人の女子が現れた。

その女子は非常に整った顔立ちで、まるでアニメから飛び出してきたようだった。

痩せた体は柔らかな白いファーコートに包まれていた。

教室の多くの生徒が入り口に立つ女子に気付いたが、上の空の佐藤隼人だけは教科書を見下ろしたまま、気付いていなかった。