第155章 心配いらない、私が処理する(3)

「和音、お前……どうしたんだ?」佐藤隼人は声を絞り出すように言った。

「動画」と佐藤和音は言った。

「何?」

「あの動画、私が持ってる。お兄ちゃんは、悲しまなくていい」

「お前……その動画のことを……お前が……」

佐藤隼人は自分の耳を疑った。昨夜見た動画を和音ちゃんが持っているだって?

彼女はもうその証拠動画を持っているのか?

しかも和音ちゃんは自分が動画を見たことを知っているのか?

「お前……俺が動画を見たことも知ってるのか?」

「うん」佐藤和音は頷いた。

「ごめん……」佐藤隼人の目が赤くなった。「俺はお前を守れなかった……お兄ちゃんなんて資格ないよ」

「違う」と佐藤和音は言った。

佐藤隼人は俯いた。「和音、俺のこと恨んでるだろ。真実を知って、でも隠すことを選んだ。その決断をした時点で、もう俺はお前の兄として相応しくない」

佐藤隼人は自分の選択が憎むべきものだと分かっていた。

今の自分が最低だとも思っていた。

それでも、この選択をした。

「大丈夫」と佐藤和音は言った。

躊躇なく、簡潔で明確だった。

佐藤隼人は呆然とした。「和音、お前……」

「お兄ちゃんが悲しまないなら、許す」

佐藤和音の言葉は単純で、明確で、断固としていた。

佐藤隼人の心は鈍器で強く打たれたかのようだった。

重く、深く、痛みがあり、その痛みの後には新鮮な血が流れた。

佐藤和音は一瞬止まり、まだ言いたいことがあるようだった。

彼女は口を開き、不慣れな声で言った。「お兄ちゃん」

「お兄ちゃん」という言葉が佐藤和音の口からゆっくりと出た。

これは佐藤和音が初めて「お兄ちゃん」と呼んだ時だった。

その一声の「お兄ちゃん」は佐藤隼人の心に突き刺さり、彼の涙は止まらなくなった。

再び佐藤和音の白い小さな顔、輝く目を見つめると……

昨夜築き上げたばかりの心の壁が一瞬で崩れ、瓦礫と化した……

妹、これは彼の妹、彼を信頼する妹……

一生大切にし、愛おしく思いたい妹……

佐藤隼人は笑い出した、まるで馬鹿のように。

その笑顔は暗い影を払った。

笑いながら、目には涙が溢れていた。

涙が流れ落ち、佐藤隼人は腕で素早く涙を拭った。