その時、校門の前で待っていたスーツ姿の男たちが近づいてきて、佐藤和音と佐藤隼人を引き離した。
佐藤和音は佐藤隼人に言った。「心配しないで、私からの連絡を待っていて」
そう言うと、佐藤和音はその人たちと一緒に歩き去った。
佐藤隼人はスーツ姿の男の一人に引き止められ、追いかけることができなかった。
佐藤隼人は必死にもがいたが、振り払うことはできなかった。
17歳の少年の力は、専門的な訓練を受けた人の前では、やはり及ばなかった。
「離せ!離せ!和音ちゃんを傷つけるな!」
佐藤隼人は自分を制止しているスーツ姿の中年男性に怒りと焦りを込めて叫んだ。
男は紳士的に答えた。「隼人少年、ご心配なく。私たちは佐藤さんの友人です。彼女を傷つけるどころか、助けるつもりです。佐藤さんはあなたが傷つくことを望んでいません。だから、彼女からの連絡を待っていてください。彼女がこの件をうまく処理できると信じてください」
スーツ姿の男は佐藤和音が行ってしまったのを確認すると、佐藤隼人を解放した。
自由を得るや否や、佐藤隼人は授業中であることも忘れて学校から飛び出したが、乗れる車もなく、その場で右往左往していた。
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佐藤和音が車に乗り込むと、車内の男が尋ねた。
「佐藤さん、どちらへ向かいましょうか?」
「佐藤邸へ。あの人は、連れてきましたか?」
「既に佐藤邸の門前の路上の車の中にいます」
「よろしい」
佐藤和音はついに携帯の電源を入れ、佐藤正志に電話をかけた。
佐藤正志も電話を待っていたようで、すぐに電話に出た。
「和音?!」
佐藤正志の声は焦りと心配に満ちていた。
「うん」
「大丈夫か?どこにいたんだ?!」佐藤正志は必死に声を抑えていた。
「大丈夫。二十分後に、帰る」
「本当に大丈夫なのか?一体どういうことなんだ?」
「見せたいものが、あります」
「和音?」
佐藤正志はこれ以上の説明を得られなかった。佐藤和音が電話を切ってしまったからだ。
二十分後、佐藤邸の門前。
佐藤のパパ、佐藤のママ、佐藤正志が門前で待っていた。
先ほど佐藤和音を乗せて行った車が現れると、三人の表情は興奮と緊張が入り混じっていた。
彼らには、これから何が待ち受けているのか分からなかったからだ。
車のドアが開いたが、佐藤和音の姿はなかった。