そのことは佐藤隼人にとって辛いことだったが、佐藤明人にとってもそうではなかっただろうか?
性格は違えども、山田燕は佐藤明人の母親なのだ。
だから佐藤隼人は最初から兄に話すつもりはなく、一人でこの全てを背負おうと思っていた。
「何が良くないって?私から見れば十分良いじゃないか。泣き虫なところ以外は全て良いよ」
佐藤和音の涙は佐藤明人のトラウマとなっていた。
佐藤明人はさらに言った:「彼をかばう必要はないよ。今度来たら、お兄ちゃんが代わりに殴ってやる。お尻が腫れ上がるまでね」
佐藤和音に笑顔で言い終わると、佐藤明人は振り向いて、あまり友好的でない目つきで菊地秋次を見つめ、それなりに丁寧な口調で言った:
「菊地さん、妹のお見舞いに来ていただき、ありがとうございます。お疲れさまでした。もうお帰りになられても結構です。妹の面倒は私が見ますので」