病室にいるよりも、佐藤和音は自分のデスクに戻りたかった。
佐藤賢治は藤田安広に丁寧に挨拶し、彼らが依然として気になっているファズル先生のことについて尋ねた。
「藤田博士、お伺いしたいのですが、ファズル先生はどちらにいらっしゃいますか?手術は完璧に成功しましたので、直接お礼を申し上げたいと思いまして」
質問したのは佐藤賢治だったが、部屋にいる全員が藤田安広の答えを期待していた。
病床に横たわっている佐藤直樹も含めて。
「藤原先生は最近とてもお忙しくて、佐藤直樹さんの手術も時間を作って行ったものです」藤田安広は礼儀正しく微笑みながら、いつもの形式的な答え方をした。
藤原淳、これは佐藤家の者がファズル先生の中国語名を初めて聞いた時だった。
あの神秘的で優れた外科のトップドクターの名前は藤原淳というのだった。
「では、藤原先生はいつ時間が空きますでしょうか?長くはかかりませんし、先生のお時間をそれほど取らせていただくつもりはありません」と佐藤賢治は続けた。
藤田安広は表面的な笑みを浮かべ、金縁眼鏡の奥の瞳には笑みが宿っていた。
「藤田博士は藤原先生の趣味や興味をご存知ですか?」
佐藤賢治は追及を続けた。
藤原先生への感謝の気持ちを表すために何かすべきだと感じていた。
「趣味の方は私にはわかりかねます」藤田安広は目の端で目の前の佐藤和音を見た。
ふわふわした小さな頭と、白い清潔な顔。部外者のように見えて、彼らが今話題にしている本人だとは誰も想像できないだろう。
「藤田博士、ありがとうございました」佐藤賢治は藤田安広にお礼を言った。
今でも佐藤家の者たちは、息子の手術を行ったこの医師にどうやって会えるのかわからないままだった。
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佐藤賢治と佐藤正志は吉野教授のところにも行き、その意図を説明した。
彼らは息子を救い、新しい人生を与えてくれたファズル先生に直接お礼を言いたかった。
吉野教授は笑いながら答えた:「藤原教授のことで私に聞かれても無理です。私たちは同僚関係であって、上下関係ではありませんので」
これで佐藤賢治と佐藤正志の期待は再び裏切られた。
「では、既定の報酬に追加で藤原先生にお支払いすることは可能でしょうか?」
直接感謝できないなら、お金で表すしかないと考えた。