第231章 庐山の真の姿を知らず

病室にいるよりも、佐藤和音は自分のデスクに戻りたかった。

佐藤賢治は藤田安広に丁寧に挨拶し、彼らが依然として気になっているファズル先生のことについて尋ねた。

「藤田博士、お伺いしたいのですが、ファズル先生はどちらにいらっしゃいますか?手術は完璧に成功しましたので、直接お礼を申し上げたいと思いまして」

質問したのは佐藤賢治だったが、部屋にいる全員が藤田安広の答えを期待していた。

病床に横たわっている佐藤直樹も含めて。

「藤原先生は最近とてもお忙しくて、佐藤直樹さんの手術も時間を作って行ったものです」藤田安広は礼儀正しく微笑みながら、いつもの形式的な答え方をした。

藤原淳、これは佐藤家の者がファズル先生の中国語名を初めて聞いた時だった。

あの神秘的で優れた外科のトップドクターの名前は藤原淳というのだった。