第229章 疎遠(1)

佐藤おばあさんは一歩前に出て、佐藤和音を自分の側に引き寄せた。「お兄さんなのに、妹に意地悪するつもり?おりこちゃんに甘く『お兄ちゃん』って呼んでもらいたいの?うちのおりこは道理をわきまえているのよ。優しくしてくれる人だけをお兄ちゃんって呼ぶの。いつも彼女をいじめておいて、まだお兄ちゃんって呼んでもらいたいなんて、何を考えているの?」

たわけた話だ。

佐藤おばあさんは、佐藤明人がしょっちゅう佐藤和音のことを「小鼻たらし」と呼んだり、からかったりするのは、和音のことが嫌いだからだと思っていた。

佐藤おばあさんの言葉は佐藤明人に向けられたものだったが、なぜか部屋にいる多くの人々は自分が叱られているように感じた。

佐藤明人はおばあさんに言われて、すっかり意気消沈してしまった。