第236章 老紳士の贈り物(1)

そのとき佐藤和音の携帯に一通のメッセージが届いた:

【おじいさまが一緒に座りたいとおっしゃっています。】

和音は返信した:【必要でなければ、遠慮させていただきます。】

しばらくして、メッセージを送る担当者は橋本おじいさんの意向を確認した後、和音に再びメッセージを送ってきた:【おじいさまは強要なさいません。ファズル先生のご都合の良いようにどうぞ。】

和音本人と橋本おじいさんの側近以外、誰も知らなかった。会場で最も舞台に近い中央の席に座り、最も特別な身分を持つ橋本おじいさんが、部下を通じて会場の一番隅に座っている和音とメッセージをやり取りしていることを。

さらに彼らが知らなかったのは、和音とこの橋本おじいさんが長い付き合いがあることだった。

以前和音が監視カメラの映像を見つけるのを手伝ったのも、このおじいさんが派遣した人だった。