第236章 老紳士の贈り物(1)

そのとき佐藤和音の携帯に一通のメッセージが届いた:

【おじいさまが一緒に座りたいとおっしゃっています。】

和音は返信した:【必要でなければ、遠慮させていただきます。】

しばらくして、メッセージを送る担当者は橋本おじいさんの意向を確認した後、和音に再びメッセージを送ってきた:【おじいさまは強要なさいません。ファズル先生のご都合の良いようにどうぞ。】

和音本人と橋本おじいさんの側近以外、誰も知らなかった。会場で最も舞台に近い中央の席に座り、最も特別な身分を持つ橋本おじいさんが、部下を通じて会場の一番隅に座っている和音とメッセージをやり取りしていることを。

さらに彼らが知らなかったのは、和音とこの橋本おじいさんが長い付き合いがあることだった。

以前和音が監視カメラの映像を見つけるのを手伝ったのも、このおじいさんが派遣した人だった。

おじいさんは国際的な最先端技術を掌握し、配下には様々な一流の技術者がいた。

和音がネット上で頭角を現し始めた時、橋本おじいさんは彼女を見つけ出した。

和音は他人に自分の身分を隠すことはできても、おじいさんからは隠しきれず、すぐに彼女の本当の身分を知られてしまった。

夜8時、オークションが始まった。

寄付された品物が次々と展示台に運ばれた。

皆が競り始めた。

最初の出品物はごく普通のものばかりだった。

落札価格も数千円から数万円程度で、最高でも10万円強だった。

山田燕もジュエリーのネックレスを落札した。一つにはネックレスが本当に良かったこと、もう一つにはこういう場で何も買わないのは体裁が悪いと思ったからだ。

オークションが半ばに差し掛かったとき、突然誰も予想していなかった品物が展示台に運ばれてきた。

出品物を覆っていた錦の布が取り除かれると、その特別な品物に皆の目が釘付けになった。

約30カラットのピンクダイヤモンド。

スタッフがこのピンクダイヤモンドについて説明した。色、透明度、重さ、カットのどれをとっても最高級で、完璧なものだった。

最後にスタッフはこのピンクダイヤモンドの開始価格を発表した:2500万円。

その瞬間、会場は静まり返った。

今日、誰もこのような心の準備はしていなかった。

通常のチャリティーオークションでは、このレベルの商品は出品されないものだった。